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Picket line 8

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 Picket line 7

 

 

***   Picket line 8   ***

 

舞い上がった煙幕弾の白い闇が、風に流されて徐々に薄れていく中で、懸命に梱包物を退避させようとする侵入者達の動きを、柊星はじっと観察し続けていた。移動用のカートに乗せられていたその包みを、彼らが人間の背に乗せ替えているのを見て、柊星はWD用のフルフェイスに包まれた顔のその唇を、機嫌の悪い顔で引き結んだ。

ちょうどその後ろから、低く響くピケのエンジン音が近づいて来るのに気が付いて、柊星は振り返った。その視線の先に、車体一面に傷を作ったピケを操る瑞穂が、猛然と乗り込んで来る。腕を振って侵入者達の退路を塞ぐ方向を指示すると、それに瑞穂が反応したのを確認した柊星は、次の瞬間、躊躇なくコンテナから飛び降りた。辛うじて視界に柊星の影を捉えていた王島が、戦闘時には滅多に使われないWD付属の通信機で大声を上げた。

「柊星、何をしとるんだ!!」
「お宝発見、確保するからトリモチ待っとけ。」
手にした銃を背後へと投げ捨てた柊星は、まだ充分に視界を遮る濃度の煙幕の中でも、まるで淀みのない動きで目標へと食らい付いた。生身よりも一回り大きくなってしまうWD着用の身体を、ぎりぎりまで沈めて地を這うように駆け進み、目指すそのお宝へと手を伸ばす。肉弾戦で生身の人間が、WD兵の反応についていかれる筈もない。反射的に物資を守ろうとした敵兵を苦もなく押しのけはじき飛ばすと、柊星はそのまま目的の梱包物を奪い取って、瞬時に後退した。

柊星の意図を把握していた瑞穂は既に、コンテナに囲まれた狭い空間に苦労しながらも、ピケを回頭させて彼が爆発物らしき梱包物を運び出すのを待ち構えていた。その爆発物の性格が特定されない以上、万が一の場合には、出来る限り変電施設から距離を取らなければならない。柊星が荷物を抱えたままピケの後ろまで移動すると、放り出された銃を律義に拾い上げた瑞穂は、ピケの前に立ち塞がって王島に通信を入れた。

「王島さん、退路側ピケでバリケード済みです。爆発物らしき物資も確保。」
「おう、こちらも他チームが合流し始めた。今そちらへ回る。」
「柊星、そのお宝、中身が分かるかな。それぐらいのサイズだったら、ピケに括り付けられそうだけど。」
「重さは10キロちょっとだ。もう一つ大きいのがあったのに、そっちはいい加減に扱われてた。向こうが起爆装置で、分離して運んだのかもしれねーな。なんかカートみたいので転がしてたから、多少の振動はこの状態なら大丈夫なんだろう。それよかピケに括って、車体ごと瑞穂がぶつける方が危険性高いんじゃねえのか。まだ、本人達から離さない方がいいかもしれねーな。」
「自爆攻撃はしない?」
「煙幕に巻かれても動きが整然としてた。テロリストっていうよりは、軍人みたいな動きだ。」
「その爆発物を調べれば分かるかもしれないけどね。」

周辺一体に散開した都築藩国の部隊が続々と集結してくると、南側に立ち塞がっていた王島は、その位置を新手に任せ、コンテナを大回りしてあたふたと二人の元へと近付いて来た。
「おい、その爆発物をどうするつもりだ。」
「今それを相談中だったんですよ。敵チームの武装解除はどうですか。」
「反撃らしい反撃も無かったが、あまりこう、突撃部隊という感触ではないな。しかも、無茶な抵抗をしない方が、安全が保証されるとわきまえている。工兵のような雰囲気なんだが、ある程度の連携行動が取れているようだ。技術職にこれだけの行動が可能となると、逆にかなりのレベルの訓練を受けているだろう。」
「…作戦立案もしっかりしてましたしね。この練度でただのテロリストというのも、あんまり考えたくないか。でも、だとすると…。」

瑞穂は素早く頭を回転させ、脳内に展開した相手の戦力想定を引き上げた。単純に環状線を止める目的で、尚且つ十分な戦力、兵器調達能力があるのなら、最も簡単なのは航空戦力による一撃離脱である。越前藩国の監視網が空を守るわんわん帝國上空では、航空機は発見されやすく不利な部分はあるが、短時間のピンポイント投入であれば可能性が無いとは言えない。

「柊星、もう一度コンテナに上がって、周囲警戒をかけろ。空から支援が投入されるとまずいかも。」
「分かった。おい、王島、もっかい肩貸しやがれ。」
「全く、早速呼び捨てか!」

 

 

 

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