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T15と私。

電網適応アイドレス 「T15と私。」
http://blog.tendice.jp/201005/article_9.html

 

・題材
「T15における自身の思い出」を下記の要綱に基づいて提出。

・文族
1000字以内の文章

提出所
文族提出所
http://www3.rocketbbs.com/731/bbs.cgi?id=idresshw&mode=res&no=2059
(携帯:http://www3.rocketbbs.com/731/m.cgi?id=idresshw&mode=pickup&no=2059

 

(2010/05/27 誤植訂正)

 

/*/

 

 その戦いは、降って湧いたように唐突に始まった。

 藩国から宰相府の整備部隊へと派遣されていた私達は、輸送途上の空母の中
で、やや間延びした時間を過ごしているところだった。戦闘待機といっても、
上陸を目指して進む船に詰め込まれ、海の上を運ばれている時である。戦闘の
主役は航空戦力で、整備部隊の出番はもう少し先、第5世界へと部隊が上陸を
果たした後のことになると、誰もがそう考えていたのだ。

「は? お仕事、お仕事ですか。が、頑張ります…」
「そうだ、ぼさっとするな」
「えっと、でもあの、整備対象の部隊は」
「お客さんはこれから、空を飛んでお出でになるってさ。現在交戦中の航空機
部隊だ。甲板で超特急整備を終了次第、直ぐに戦線に復帰する」
「…って、まさか、タッチ&ゴーですか? それは教科書の最後を飾る、一番
難易度高いお仕事なのではっ!?」
「それが分かったらさっさと準備に取り掛かれ!」
「マ、マニュアルを…」
「今更そんなものが役に立つか!!」

 寄せ集めとは言っても、事前に十分演習も行われ、整備技術の開発も兼ねた
この部隊は、素晴らしい整備評価を誇る有能なチームである。その主力となる
宰相府藩国の猫士達は、既にきびきびと準備に飛び回っていた。
「エ、エルナちゃん、頼りにしてますー」
似たような名前が縁でペアを組んだ、というより彼女が主力でこちらはおまけ
という、評価値では足元にも及ばないような有能な猫士が、賢そうな丸い瞳で
見詰めながら、こくこくと頷いている。
「…う、うん。頑張ろうね」

 この部隊に参加してから、様々な事件が起こった。
故郷の誇りである筈のコスモスの、宇宙をゆく船を走らせる光が、大地を薙ぎ
払うのを見た。いつの間にか死んで、帰ってきた。呼び戻してもらったという
のが、きっと正しいのだろう。共に手を取り合おうと合併した筈の藩国で、悲
しい事件が、何度も起きた。それを正す為の努力もまた、上手く伝わらないこ
とが繰り返された。

 世の中はそんな風に、描かれた設計図通りにいかないことが、たくさん起こ
る。でもそれは、知識はやっぱり知識でしかないからだ、そんなことも解るよ
うになって来た。だからせめて、小さな自分の手で、今この時に為し得ること
を全力で出来るようになろうと。

 その時、誰もが振り返るような轟音が、遠く彼方から鳴り響いた。音の壁を
裂いて飛ぶ鉄の鳥が、凄まじい速度で近付いてくる。
「来たぞ! 総員配置に付け!!」

(999文字 スペース含む)

 

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