あらすじ&予告編
随分と間延びしてしまったので、まずは現状の復習から。
ヤガミとタキガワを両天秤にかけつつ、飛行隊4名全員の撃墜数300機を目指して航海中のおらが船。しかしさすが死神、ヤガミ一人がすいすい記録を延ばし若手二人を引き離してしまうので、しばらく飛行隊から追い出し、タキガワとイイコちゃんの強化キャンペーンを展開。まずタキガワが250機突破。居残りイイコちゃんと二人パイロットで頑張って、やっとのことで250機までたどり着きました。
しかし浮上して遊び呆けている隙を突かれ、都市船選挙を目前にして議会停止を喰らう羽目に。これで火星の全ての都市船は、革命軍に敵対する保守本流体制となり、都市船入港出港の危険度増大。しかもこれまで独裁都市間航路に閉じこもっていた敵艦隊は、一斉に勢力拡大を始めるはず。
ますます平和が遠のいてしまった我が火星ですが、まずはイベントファイナルをば。
2253ー9ー25現在 アキダリア付近。
(第七世界時間 2005-12-2)
ヤガミとタキガワが、はるかの気まぐれで陸戦部隊に配置換えされてから、既に一ヶ月が過ぎようとしていた。RB二機のパイロットを置かないまま、イイコと二人きりのパイロットでそれなりに苦労しているようだが、若手を鍛えようという考え方には賛成出来る。RBの戦力を意図的に引き下げることに、艦内では不安の声があることは事実だったが、それでも夜明けの船は、確実に激戦を勝ち抜いていた。
とはいえ、はるかには実際のところ余裕が無いのだろう。以前のようにコーヒーを配達と称して、艦内を歩き回る姿を見かけることもない。トレーニングルームには何回か顔を見せ、タキガワとは話しこんでいたし、タキガワの方もハンガーへ顔を出していることは知っていた。だがヤガミはあえて黙々と訓練に励み、はるかもヤガミとは距離を置くつもりのようだった。
そのはるかが久しぶりにトレーニングルームに現れたのは、酷く長引いた激戦をくぐり抜けた後の事だ。長時間戦闘に気をもんでいたところでもあり、ヤガミははるかの無事な姿にほっとした。が、ずかずかとやってきたはるかは、いきなりヤガミの傍で腕を組むと、モノスゴイ形相で睨みつけたのだ。その無言の剣幕に押されて、ヤガミは鼻白んだ。
はるかは仁王立ちのまま、おもむろに口を開いた。
「酒保に、高級ワインとシャンパンが入荷してるんだけど。」
その表情と内容は全く一致していなかったが、とりあえず内容は理解できた。元よりヤガミは、臨検で艦内に入ってくる物資は、密かに全て把握していた。確かに高級な部類のアルコールが入ってくることは滅多に無く、それは艦内では重大な話題の一つであり、また個人的にも嬉しいことではあったが、わざわざはるかがヤガミの所へ報告に来るようなことでもない。
そういえば、吟醸酒を奢ってもらう約束がまだ保留のままだったか、などと考えているうちに少し口元が緩んでいたかもしれない。
「ああ、そうだな。」
機嫌よく答えるヤガミとは反対に、はるかの眼がさらに険しくなる。
「やっぱりヤガミの仕業だったのね。時間に余裕が出来た途端に悪巧みなんて、いい度胸してるじゃない。しかもイイコちゃんまで巻き込むなんて。あの艦に何か重要な物が載ってるからとか何とか、そそのかしたんでしょ。そうでもなかったら、イイコちゃんがあんな事する筈ないもの。」
「……何だって?」
「言い訳は聞きません。絶対許さないんだから。」
ぴしりと指を突きつけて、はるかは言い放った。
「だったらアルコールの調達方法なんか、考えてる暇も無いくらい忙しくしてあげる。首を洗って待ってなさい!」
そのままくるりと踵を返すと、はるかはばたばたと賑やかに階段を駆け上がってそのまま部屋を出て行った。状況が全く掴めないヤガミは、珍しく、呆然と立ち尽くしていた。
そこへ階上から、ひょっこりとタキガワが顔を出す。
「なんだ、ヤガミ。まーたウィッカと喧嘩したのかよ。」
「喧嘩……いや、喧嘩というか。」
ヤガミは腕を組んで、本気で頭を捻った。
「一体何の話だ?」
ていうようなことで。世間様も何だかヤガミで盛り上がってるので、死神特別ステージなど行ってみようかなと。ついでに嫌悪下げて、ちょっとは仲直りしますか。大絢爛ボーナスのSSみたいに、ラブラブになれるかなー、いやまあ、所詮うちのはるかちゃんじゃねー。
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