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2012年11月18日 (日)

創作ノート・加賀見の真名衆

真名が人を選ぶのか、それとも、魂が己の真名を掴み取るのか。生まれて死ぬまで、逃れようもなく揺らぎ難い強固な真名を持ち続けるものもあれば、ゆらゆらと運命の間を彷徨うように、真名を変えてゆくものもある。いずれにしても、真名衆に求められることはただ誓詞のみ。

往って、己の為すべきことを為し、その責を負う、ただそれだけ。

己のするべきことが何であるのか、それを選び取るのは己の魂でしかない。だから、真名衆を縛るものは、厳密には己の魂の声だけだ。集団としての律を守ることは要求されるけれども、それに従わなければならない義務は存在しない。己の責において反逆するのなら、それは真名の選択として認められ、時に一党を二分してお互いに刃を交えることすらある。解き放たれて己として在る、それ故の真名衆であるとも言える。

その中核を為す各務の本家は、古の時代に異界より日の本の国に流れ着いたマレビトの子孫だ。現(うつつ)のこの世と、<向こう側>との間を行き来する能力を持っている。だが、異界が大きく現を侵略することを良しとせず、人の理に荷担して境界を分ける、裏切り者でもある。元来は、各務の血筋こそが、異界においての正統であったとも言われている。だから、時折生まれる氷上の媛は、同時に異界の頭領として求められ、生まれながらにして異界の者達の名前を記憶している異能の存在でもある。氷上の媛が人を選ぶことを諦めた時、人の世は終わるのだと、異形の者達は信じている。

各務の本家筋ではあっても、はるかもみふゆも、氷上の媛という訳では全然無い。はるかちゃんは真名衆としては突撃担当、言ってしまうとぱしり専門、みふゆちゃんは集団としての加賀見一党を率いる長だけど、王が立つ場合には、むしろ立場は城代に近い。西王と今生の氷上媛の物語が存在していた訳だが。はるかちゃん達は、それよりも後の世代になるのかな。

真名衆は最大でも99人だけだけれども、実際には真名を持たない一党の方が、もっとずっと大きな集団だ。加賀見一党は古くから、普通の人間を超える眼や耳を持ち、家族や社会に馴染めない人々の受け皿として集団を形成してきた。能力は、鍛えなければ制御出来ない、それが加賀見の基本的な姿勢なので。成長に従って、能力が薄くなれば加賀見を出て生活するだろうし、逆に能力を安定させて、加賀見の一員として働き続ける者もいる。その中で、真名を受けた者が一党の指令系統として行動するのが普通。まあ、集団が大きくなれば、色んな職種が必要になるので、真名衆といっても結構バラエティに富んでいる訳なんだけど。

ただ、マレビトの血を継ぐ存在は、各務本家だけという訳ではない。そういう人々も集まってくることで、血筋としての各務本家は、何代かに一人の氷上の媛を生み出す異形の血の濃さを守り続けることに成功している。宗教宗派を問わず、本物の能力者だけを吸収し続けてきたとも言える。同時に、人と異形のものとの軋轢が起こす事件に対処したり、気が強過ぎる為に人が住むには適さない土地を所有したり、流れを逸らして所謂お祓いをしたりと、その能力による生業を始まりに、結構な財閥も形成している。現代日本においては、明治維新以降華族階級や寺社仏閣が所有していたその手の土地を手放すに際しての不動産取引を元にして、護符の考え方を組み込んだ建築や各種デザインの世界で密かなネットワークを持つ企業グループに成長している。彼らは、科学技術の進歩がやがて、自分たちの世界観と接近してくるであろうことを予見していた筈だ。だから、人材教育や先端技術開発の世界にもそれなりの資金を流し込んで、影響力を確保してるんじゃないかな。ついでに、芸術分野も。古く宗教の世界が、その時代における科学技術の進歩や社会への普及に、かなりの影響を持っていたというのは、何処の世界にもある筈だし。

各務の本家筋に産まれても、能力を持たない可能性は、現代日本においては大いにあり得るだろうけど。加賀見一党は、集団の性格上養子縁組について拘りが無いので、その系統ではない名字を名乗ってるのは良くあることだ。梨園の雰囲気を考えていた。今代の西王と氷上媛は、本家直系の兄妹ということになってるが、実は従兄妹とかね。西王の母親は、各務本家の直系として強い霊力を持っていたけれども、それに囚われて生きることを嫌い、各務を出奔してどこの馬の骨とも分からない普通の男と結婚した。だが、加賀見の庇護から逃れたことで異形の者達に目を付けられて、西王は両親を共に失うことになる。そして、各務本家に引き取られた、だから彼が、加賀見一党の頭領を意味する西王の真名を継ぐことには、色々といざこざがあったりする訳なのだが。

例えばそうやって、加賀見を出た父親が、亡くなったり、何らかの理由で家族と連絡が取れないような状況になったとしても。加賀見一党の側で、その家族を把握していないということは、有り得ないと思うな。もしも、加賀見一党が解体される世が訪れるのだとしても。氷上の媛を生み出す血が生き残って、まだ人の世が続くのだとすれば、逆にその周囲に、真名を自ら継ぐ巡り合わせの者達が、出現することになるだろう。それが、人と異形の者達との命運を占う生きた占術としての、真名衆の意味だからだ。ただし、自分のことは自分で決めるのが、加賀見の流儀なので。介入の必要性があると認められるまで、基本的には放っておかれるかもしれないけどね。

真名を継いではいても、基本はそうやって、加賀見からはぐれて単独行動を取っているものもある。異界の血が濃いと、加賀見の結界内に長く留まるのは、あまり居心地のいいものではない。犬神使いは、眷属を引き連れてそうやってはぐれている口だな。あれは私のキャラクターの中でも、最も原始的なタイプの一人で、組織に属するのは全くの不向きなので。だが、牙剥く憤怒の担い手としてはちょうどいいだろう。外伝で主役級とか、敵役とかを張るようなキャラだね。反対に、加賀見一党を束ねる機能を持つことそのものが、真名の性格であるものも多い。各務本家のストーリーラインに登場するのは、どうしてもその手の人物が多くなってしまう訳だが。杉宮の原型も真名衆だよ。加賀見の実働部隊である武者所の頭で、今代西王の師匠というか、指南役だな。政治家はまた別の筋があるんだけど、乱世の家老職あたりには向いてるのかね。

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