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2012年11月21日 (水)

ぱらどくす

タイムトラベルでタブーとなるのは、厳密には歴史を変えるそのものではない、因果律を破壊してしまうことだ。複雑怪奇に絡み合った因果の糸がどこでどう繋がっているのかを判別するのは、普通なら不可能なので、結局は歴史を変えないというベクトルで対処するしかない、そういう設定になる。でも、因果律の全てが保存されている世界でなら、話は違ってくる。

かつて何処かで、時間犯罪が行われた。でもその被害は、無名世界においては一箇所に留まらない。因果律が循環することを前提とする世界観では、たったひとつの齟齬がコピーにコピーを重ねて、歴史のありとあらゆる場所に出現することになる。だから、どれが最初の事件だったのかを特定するのに、普通のパズルを解くみたいに証拠を探してとかいう方法論では、太刀打ち出来ないんじゃないのか。因果律の視野から、可能性伝達の視野から見て、「同じ形」をしている相似形を帰納的に捜していかなければならない。逆に言えば、介入ポイントは何処にでも遍在しているんだ。それを確率的に積み上げていくことで、エラー修正をする方法もある筈だ。

ただ、世界全体の因果律を保持し続ける上で、あまりにも根本的なラインを切られてしまったら、そういう修復には膨大な時間がかかるだろう。ダメージが蓄積する速度の方が速ければ、結局追いつけないで、世界結晶は散じてしまうことになる。世界因果律演算装置は、リアルタイムでは計算結果を出せない、そんなSFがあったような。

時間犯罪。犯罪という言葉は、どんな行為が法に抵触するのかが規定されている場合に使われる筈だ。じゃあ、何処からどう見ても犯罪というのなら、それは、世界という存在を保持する機序そのものに対する違反行為だろう。その破壊行為が行われたが為に、世界の全部が崩壊するというのなら、それを元通りに修正するのは、正当防衛だよね。

世界を丸ごと修復するんじゃなくて、失われた少年を取り戻した。少年は母を捜している。母も息子を捜している。ネグレクトは、最初からある程度あったのかもしれないけど、子供を失ったショックで兄弟姉妹がそういう危機に晒されるというケースは指摘されている筈だ。子供を救うために川へと流してもう一度救い出す、例え、親子と名乗ることが出来なくなるとしても。そうやって親子であることを知らないが為に起こる事件というのが、古来から物語として伝えられるのは、やはり母親にしか分からない闇が、あるってことなんだろうけれども。最低接触戦争の最中に旦那やその親族と連絡が取れなくなって、実家に避難するのは当たり前だろうけど、もしも火星まで混乱に巻き込まれたのなら、マワスプであるより火星先住民である方が生き残れる確率は高い筈だ。奥さんは、橙、それが意味することは。

私は、亜細亜ちゃんみたいな子が、自分個人の望みでしかないことを口にすることの方が、物語として最大の難関だと思うんだけど。でも、その一歩を踏み出さなくてはならない瞬間が、やっぱりある。ただそれだけが、世界を覆すちからとなるだろう。だから、その切符を手にするためには試練が必要だというのなら、それは確かにその通りだと思うよ。貴方方の価値観から言えば、ちょっと違うのかもしれないが、私は、道具に使うのならプレイヤーの方だと思う、だから切符は、玉藻の前に渡すつもりだったんだけど。

わんこの想い出が、亜細亜ちゃんみたいな女の子の気持ちを救う物語を、昔描いた。それはきっと、私の物語だったんだろうと思う。ちょっとおばかで、自分の飼い犬ですらない、隣の家の白い紀州犬だった。貴女の傍にも、わんこがいるだろう。私が流した涙の全部を、貴女にあげるね。弟を返してって、言ってもいいよ。

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