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2013年8月27日 (火)

比翼の鳥16・破

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 パートナーシップ 29

 

 

***   パートナーシップ 30   ***

 

「艦長、本隊より打電。夜明けの船が加速開始、潜行方面へ進路を変更する模様です!」
「ふむ、やはりRBを迎えに来るな。」
「…ここまでは、予測通りの反応ですね。」
「セカンドのRBは?」
「急速接近中、まもなく戦域レーダー圏内に到達します!」
「さて、ここが辛抱の為所だ。」
「!? お、御大、交戦中RB隊が浮上方面へ散開、艦を離れます!!」
「……しまった、勘付かれたか。」
「? 艦長?」

訝しげな声を返す副官を手で制し、今まで艦長席にゆったりと納まっていた姿とは、一線を画すような緊張を秘めた動きで、その男はぎしりと立ち上がった。どんな戦況に遭遇しても、飄々としたマイペースを崩さない豪胆さで名を馳せるこの指揮官が、同時に、ぎりぎりの歴戦を凌いで生き延びた本物の猛者でもあることを、この艦に乗って知らない者はいない。脇に控えた長身の副官よりも、ずっと小柄な身でありながら、一瞬で周囲を制した厳しい威圧感に、艦橋の総員が固唾を飲んでその言葉を待ち構えた。

「面舵一杯、左舷を前方へ。水雷、撃ち方用意、雑魚には構うな、希望号だけに攻撃を集中する。シールドの口が開き次第、照準可能な有りっ丈の水雷をぶちまけろ。左が終われば取り舵、次は右だ。我々はなめられたようだ。再出撃のRBと入れ替わりに、希望号が着艦へ向かうつもりだろう。トップを欠いても、手負いのボロ船相手など余裕だと言いたいらしい。だがここで逃がせば、補給後万全の希望号を従えて、夜明けの船が戦線離脱を図る。真正面から“死の舞”を迎え撃つ羽目になるぞ。」

艦長のその一言で、アイランドの空気は凍り付いた。敵対する彼らにとっては悪質なジョークでしかない“希望”の名を豪語する、白い改造士翼号の常識外れの戦闘能力、火星派遣軍全ての悪夢が、夜明けの船の苦境でのみ発揮されるという事実は、既に軍所属の人員はおろか、都市船に住む一般住民の間ですら噂されるまでに広まっていた。元より、RB隊を引き付けて艦から分断し、回収に向かう夜明けの船の背後から、友軍が追い上げる状況へと持ち込まなくてはならないのは、この作戦における彼らの任務そのものである。だが、作戦指示書の内容を冷静に認識することと、その生々しい現実に巻き込まれ目前に恐怖を突きつけられることの間には、雲泥の差があった。その張り詰めた緊張を裂くように、再び指揮官の声が響いた。

「総員、奮闘せよ。白い魔女を墜とす!」
「はっ!!」

 

 

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