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2006年2月 7日 (火)

閑話休題

二次創作、捏造方面へまっしぐら。パズルの最後のピース拾えたらしいので、ラストバトルまで続きそうです。いやー、我ながら黒いわー。なんと言うか、度胸がついたか?

購入者全プレ(開き直り)は順ぐり消化しますですが、まず一本は近日登場予定。季節ネタなので。か、かわいい、ギャグ?
とりあえず今回は、罰ゲームとセットのお話、から。

 

 

*** 浅い眠り ***

 

ヤガミを残してハンガーを飛び出した勢いのまま、はるかは階段を駆け上がった。高熱をもった身体は重く、息が切れる。義体としては通常考えられないほどコンディションは悪かったが、はるかはそれを無視することに決めていた。例えこの状態が、徐々に悪化しているのだとしても。

原因も対処法も分かっている。というよりも、自分でこの状態を引き起こしているのだから。

涙の跡の残るままでは、誰とも顔を合わせたくなくて、エレベータホールも駆け抜けた。そのまま中央階段へと飛び込んで、やっと足を緩める。無意識に後ろを振り返ってしまってから、そんな自分が可笑しくて、少しだけ笑った。ヤガミが追いかけて来たりするはずもない。

それでも、あのヤガミのことだ。義体の異常な発熱状態に、気が付かなかったとは思えない。唐変木のくせに、気が付かなくてもいい事にはやたら鋭いよね、などと思う。こんなに早くバレてしまうとは計算外だった。しかも。

あんなことまでするつもりじゃ、なかったのにな。

はるかはため息をもらすと、今度はゆっくりと、一歩ずつ踏みしめるように階段を降り始めた。薄暗い階段に足音が響く。絞られた照明のため視覚が制限され、幾重にも反響して広がる聴覚の世界と、逆転し、混ざり合い、互いを補完し、別の世界を構築してゆく。

そう、こんな風に。シールドで外界から遮断されたRB戦闘では、重力に基く上下左右の感覚が、役には立たない。自分の存在を唯一の基準として、その自分からどの位離れているのかという差異、そんな曖昧なもので、敵を測るしかないのだ。それは肉体の五感で構成される日常とは、異なる世界だった。そして、さらに効率的に戦闘を行うのなら。五感によって支配された自意識の、その外側まで感覚を広げなくては。

この感覚を何と呼ぶべきなのかは、まだよく解らない。いずれはこれを、己の剣として、使いこなせるようにならなくてはならないのだろう。だが。まだ、今は。

これじゃ、駄目なのよ。また熱出ちゃう。

自分の両手で顔を挟んで、ぴたぴたと叩いてみた。ついでに涙の跡を、子供のような仕草でこすってごまかした。歩きながら、ゆっくりと深呼吸する。通常の義体の五感が戻ってくる。安定して、限定されたセンサー情報の世界。眼に映るものしか見えない、常識的な、その範囲を決して逸脱することのない日常の風景。

まずは発熱を治めないことには、強制的に医務室送りになりかねない。おそらく、既にMAKIに生体データのチェックぐらいはされているのだろう。そういうヤガミのそつのない有能さには、全幅の信頼を置いている。問題は、通常どおりに行動する自由を、許してもらえる程度に、良い情報を渡しておかなければならない、ということだ。

でももしかして、ちょうど良かったのかも。木の葉を隠すなら、森の中、かな。

D2のホールを抜けて、士官個室へとたどり着く。誰にも会わないで済んだのは幸いだった。いくらはるかでも、この状態で普段通りの受け答えが出来るのかどうかは自信がない。真っ直ぐにベッドへ向かうと、無造作に倒れ込んだ。義体の重量にベッドが派手に軋む。

このまま少し気を緩めれば、巻き込まれる。意識の輪郭が、溶ける、そして    

そして。胸が痛い。

その痛みが、はるかの意識を引き戻した。まるで物のように全身の感覚を放棄したまま、はるかはその瞳だけを見開いた。胸が、苦しくて、痛い。何度となく、この痛みがはるかを自分自身へと連れ戻す。そしてだからこそ、はるかは自分の存在を手放す寸前まで、踏み込むことが出来るのだ。それは、命綱のようなものだった。

そう、そして、だからこそ。あたしはまだ、何も知らない方がいい。自分が何を知っているのかも、忘れてしまった方がいいの。

もう一度、はるかは眼を閉じた。何度となく妨げられるため、眠りはいつでも浅く、ただ微睡むだけにしかならない。それでもはるかは、呪文のように繰り返しながら、眠りについた。

何も、知らない。何も。全ての秘密が明らかになる、その時まで。

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