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2006年2月11日 (土)

閑話休題

9日前後の騒動をご覧になった方には、お見苦しいところを暴露してしまい、大変申し訳ありませんでした。一部身内には大好評。もう、何とでも言って。今後はこのようなしょうも無いものはお見せ致しません。少なくとも、あんな中途半端な形では。

さて、購入者全プレのお題でございます。
えー、先に謝っちゃいますが、またしても、ちと的を外しているような。報われないタキガワと健気なヤガミはシリアス編にて再チャレンジ。ハンカチ食いしばるタキガワは微妙ですが、ヤガミは泣かす予定、ええ。ですが展開はもうちょっと先なので、しばらくお待ち下さい。
とりあえず、ドタバタでお茶を濁しておきますか。

お題
「三つ巴。カッコイイはるか。健気なヤガミ。報われないタキガワ。」

人間、追い詰められると本性出ますね。危なくお色気ネタに走りそうになりましたが、すんでのところで踏み止まる。どうどう。っても大した色気じゃないけど。こちらのネタの公開は気が向いたらば。読みたいですかね
代わりに、この時期しか描けない季節ネタです。色気より食い気。たいむり~。

 

 

「うーん、今の火星で手に入るものなの?」
「社交界のパーティには、本物もありましたわ。でも一般庶民向けには、色々と代用品があるのではないかしら。」
「私も地球では食べたけど、火星のお店じゃおいしいのはあんまり見かけないね。大好きだからあちこち探してるの。」
「そっか。じゃ手に入らない訳じゃないけど、ちょっと手間がかかるってことね。材料が手に入れば、作っちゃうんだけどな。」
「えっ、ウィッカこんなものも作れるんだ?」
「高級品は地球からの輸入しか無いと思いますけれど。」
「……よし、資金はあたしが出してあげる。もしどうしても手に入らなかったら、何とか地球からお取り寄せ出来ないかな。どうせやるなら、敵をぎゃふんと言わせてやらなくちゃ。」
「ウィッカ、それ何かちょっと違わない?」
「あの、みなさん、ありがとうございます。私なんかのために……。」
「何言ってるのイイコちゃん。こういう楽しいことは、みんなで分け合うのよ!」
「……やっぱり何だか違うと思うけど。」

***   バレンタイン大作戦   ***

 

都市船からの出航時間が迫ると、上陸していた者達が次々と帰艦し、夜明けの船は急に賑やかになる。久しぶりに潜水艦の密閉空間から開放され、羽を伸ばしてきた連中は、皆上機嫌で騒がしい。そして都市船帰りのクルーに、船内では手に入らないような土産物をねだる残留組が、さらにその賑やかさを拡大することになるのが常だった。

その日、勤務の都合で外出出来なかったヤガミとタキガワは、食堂へと遅い食事にやってきて、都市船帰りのはるかと出くわした。両手一杯に何やら荷物を抱えて、せわしなく歩いている。

「おかえり、ウィッカ。なーなー、何か面白いもんでも食べてきた?」
「もう今回は忙しくって、買い食いの暇なんてありませんでした。なのでお土産はなし。」
「ちぇっ、つまんねーの。」
「あっ、あのね、ヤガミ。あたしとイイコちゃん、明日一日お休みもらうから。タキガワと二人で頑張ってね。」
「……なんだと?」
「そうだ。もしかしたらエノラも、かもしれない。とにかく残りのメンバーと何とかしてねー。」
「おい、どういうことだ。」

そのまま歩き過ぎようとするはるかを呼び止めてみたものの、はるかの方はきちんと立ち止まるつもりもないらしい。うろうろと足を動かしたまま、早口で返事を返す。
「艦長に許可は貰ってあります。ついでに厨房も貸切で、関係者以外立ち入り禁止。コーヒーは適当に配達してあげるから。」
それからきりりとヤガミを睨みつけると、はるかはきっぱりと宣言した。
「乙女の一大事なのよ。」

それだけを言い捨てると、くるりと背を向けて歩いて行く。あの様子ではこれ以上は何を言っても無駄だろう。
「何を考えてるんだ、あいつは。」
「ウィッカが何考えてるのか分かんないのは、今に始まったことじゃねーじゃん。それより俺、腹減ったよ。」
さっさと食堂へ駆け込み、電光石火で食べ始めるタキガワを追いかけ、ヤガミも席についた。

「そういや、ヤガミ、ばれんたんって、何?」
「?……バレンタインの事か? どこでそんな言葉を。」
「ウィッカとイイコが話してたんだ。なんだっけ。てんぱ、なんとかとか、温度がどうのとか。ウィッカに聞いたら、ヤガミが知ってるって。」

女性から男性に告白することが許されなかった、などという感覚は、2253年の世界に生きるタキガワには、理解し難いだろう。そもそもかつての日本でのバレンタインデーの行事が、そういった意味合いをどの程度留めていたのかは怪しいものだ。どう説明するべきかを迷ったあげく、ヤガミは最もタキガワの興味を引くであろう部分だけに省略することにした。

「……大昔の風習だ。2月14日をバレンタインデーといって、女性から男性にチョコレートをプレゼントする。それにかこつけて、好きな男性に告白するのを本命と呼んで、特別なプレゼントを渡したんだ。それ以外は義理チョコという。」
「つまりチョコもらえる日か。でへへ、14日ってあさってじゃん。」
「もらったら3月14日にお返しを要求されるぞ。倍返しが相場だ。」
「あっ、つまりそれが目当てなのか。女ってほんとちゃっかりしてるぜ。」
そんなことを話しながら、ヤガミは夜明けの船の中に、もう一組バレンタインデーを正確に知っている二人がいることを、思い出していた。

それからほぼ一日、14日当日になるまでの間に、艦内にはバレンタインの情報が行き渡っていた。内容に多少のバリエーションはあったが、概ねチョコレートをプレゼントする日、とだけ認識されているようだった。タキガワは朝からぐるぐるとハンガー内を歩き回り、落ち着きがない事この上ない。普段なら雷の一つも落としてやるところだが、さすがのヤガミも、この日ばかりは大目に見てやることにした。

厨房に立て籠もっていたはるかがハンガーに姿を見せたのは、ちょうど勤務シフトが切り替わり、飛行隊が休息時間に突入したころだった。
「ウイッカ!」
「あらタキガワ、もしかしてお待ちかね?」
「えー、だってさー。」
「はいはい、じゃあこれ。タッキーにはボリューム重視で一割増量。」
「やったぜ!」
手作りらしい控えめな袋を受け取るなり、タキガワはそれを開くと、ナッツチョコを口の中に放り込んだ。
「おっ、うめー! すげーよ、ウイッカ、こんなの初めて食ったぜ!」
続けざまに幾つも頬張ってから、タキガワはきょとんとした顔をはるかに向けた。
「あれ、ヤガミの分は?」
「あらー、ヤガミも欲しかった?」
思わせ振りなはるかの言い方にカチンときて、ヤガミは唇をへの字に曲げた。いつの間にやら、自分も楽しみにしていたことに初めて気が付く。そして、自分とはるかの両方に腹を立てた。すっかりはるかのペースに乗せられているのだ。ここで素直に欲しいと言えば、はるかがヤガミの分を用意していないということもないのだろうが。だが、しかし。
「……いや、別に。」
「ほらねー、こういう可愛くない人にはあげませーん。代わりにコーヒーでもどうぞー。」
その言葉を予想していたとでもいうように、はるかはつかつかと歩み寄ると、ヤガミの手にコーヒーを押し付けた。

そんな二人のやり取りを見ながら、タキガワはいつになく真剣な表情になっていた。はるかとヤガミとの繋がりは、例え表面上そうは振る舞わなくても、深く、強い。それを誰よりも良く知っているのはタキガワだった。だが同時に、それが一般的にいう男女の仲が良い、という種類のものとは微妙に違うのだということも、タキガワは気が付いていた。
その意味では、はるかはいつも独りで立っている人間だと、タキガワは思っていた。そしてその傍らの空白に、自分が立ちたいとも、密かに思い続けていたのだ。
タキガワは意を決して、はるかに問いかけた。
「ウィッカ、えっと、その……これ本命チョコ?」
はるかは少し眼を見張って、タキガワを見つめ返した。ヤガミが、音も無く息を飲む。タキガワの真っ直ぐな眼差しを受け止めて、はるかはゆっくりと、優しく微笑んだ。

「残念でした、私は配達担当なだけ。艦橋も今ひとまわりして来ました。」
「……あ、そ、そうだよな。は、あはは。」
「そういえばねー、女性陣が食べられないとつまんないから、イイコちゃんと二人で、チョコのパーティメニューを色々作ったの。艦内カフェにもう並べてあるから、タキガワも食べに行ってきたら? ケーキもあるし。」
「えっ、ホントに!?」
「実はー、食欲魔神タキガワには、最後に連絡するって約束なんだー。もうみんな始めちゃってるんじゃないのかな。」
「ああっ、ひでーよ!」

ばたばたとハンガーを飛び出して行くタキガワを見送ってから、ヤガミはほっと息をついた。タキガワの後を追ったはるかの視線が、そのままぼんやりとドアに向けられている。それが無性に居心地悪く、ヤガミは慌てて話題を捜し出した。
「……この騒ぎは、イイコのためか。」
「ん、まあね。マイトにチョコあげたいんだけど、目立たないようにしたいって言うから。」
「これのどこが目立たないんだか。」
「もらった人が意味を理解してれば、人前で開けたりしないでしょ。」
「そうか、中身が違うんだな。そのために厨房を立ち入り禁止に。」

話しながら無意識にコーヒーを口へ運んで、思わずヤガミは眉をしかめた。ブラックコーヒーの苦みが口の中に広がっていた。ちらりとはるかに視線を向けると、唇の両端を吊り上げ、猫のような笑顔でにやにやしている。その表情がいつも通りであることに、ヤガミは少なからずほっとした。
「コーヒー、苦いかな。」
「わざわざブラックコーヒーを持ってきたのは、どこの誰だ。」
「あはは、じゃあさ、甘いもの欲しくない?」

一体どこに隠していたのか、はるかは小さな包みをヤガミに差し出した。赤いリボンが掛かった、きちんとしたプレゼント包装である。
「……。」
「ヤガミの驚く顔を見るには、苦労するね。」
大変珍しいことに、はるかが照れ臭そうに見えるのは、気のせいだろうか。
「やっぱりヤガミにはウィスキー・ボンボンだなと思って。でもこれ作るのは大変なのよ。だからエノラとスイトピーのコネクション、目一杯使わせてもらって、地球から取り寄せたの。高級品なんだから。数が無いから、みんなには内緒ね。」

包みを凝視したまま固まっているヤガミを見かねたように、はるかはひらりと身をひるがえして横に立つと、ヤガミの手の中にそれを押し込んだ。
「ねぇ、開けてみて。」
「あ、ああ。」
ヤガミは慌ててリボンをほどき、包装紙を引きはがした。赤いリボンを取り上げ、指にからめて遊びながら、はるかはその手元を覗き込んでいる。ケースを開くと、甘いチョコレートの匂いがふわりと広がった。艶やかに光るチョコレート・ボンボンがきれいに並んでいる。はるかがさらに近くに、ヤガミにもたれ掛かるように身を寄せ、ヤガミが息を詰めた、その瞬間だった。
目にも留まらぬ早業で、はるかはチョコレートを掠め取ると、そのまま口の中に放り込む。
「いただきー。」
「こら、タキガワみたいなことをするな。」
「いいじゃん、ひとつぐらい。」
「貰った本人が食べる前に手を出すような、行儀の悪い真似を……」

チョコレートを頬張ったまま子供のように笑うはるかを見て、照れ隠しの小言を並べながらも珍しく上機嫌だったヤガミは、ふと、あることに気が付いた。

「……おい、ウィッカ、まさかとは思うが。」
「? なあに?」
「お前まさか、自分が食べたかったから手間隙かけたとか、いうんじゃないだろうな。」
「えっ、えーとね、だ、だからちゃんと包みを開けさせてあげたでしょ。」
「……そういう問題じゃないだろう。」
「だってー、滅多に食べられない高級チョコレート、味見してみたいじゃないのー。」
「ウィッカ、お前なぁっ!」

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コメント

>おんちさま

お楽しみ頂けたならば、何よりです~。
えへ、やっぱ季節ネタの消化が優先ですが。お色気ネタは人気がある、ようで?
こちらタキガワは大変哀れなことになってますが、なんか皆様が許すとおっしゃるので、そのうちに。確かにタキガワのキャラは、報われないのが似合うんでしょうかね、話をひねってるとどんどんそういう方角に~。

投稿: あぎ | 2006年2月12日 (日) 20:36

「かわいい」ギャグにはこだわらない、と言ったのに。
しかしタイムリーだし、かわいい題材で楽しめました。
うーん、やっぱタキガワは報われないのが似合ってると思うのはヘンですか?

投稿: おんち | 2006年2月12日 (日) 10:11

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