ゆりあの氏族
東に父の大国があれば
西には母の大国がある
歴史の波に翻弄され
犬猫の子のように
あらゆる国へと遣わされて
広がってゆく血族の網目
そんな生涯が
幸福であるか否かを
それこそ
他人事の立場から
語れる訳も無い
でも
それを不幸であると決め付けることも、また
傲慢というものなのかもしれない
生き延びるという
命に与えられた高貴なる義務を果たすため
あらゆるものを己の武器としながら
連綿と継がれてゆく
血の系譜の強かさ
たとえば
それが随分と不確かなものであろうとも
名門という看板は
確かに立派な武器なのだろう
むしろその栄光への憧れこそが
今もなお、世界を染めているのかもしれない
全ての道が通じる
古の国の皇帝の血
その妻は
花の氏族の生まれ
帝國の繁栄の象徴と謡われたその樹は
血のように赤い実の生る
堅き角の樹にしてボルトの樹
遥か末裔の娘がいるのなら
その娘は
ケンヌルノスの角笛の音を
聴くのだろうか
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